【 Tone 1.滋賀 にほの海 】Phrase.9 竹生島の妖怪 ~ This muddy vesture of decay(この朽ちゆく泥の衣)~
- Aureilia

- 6月19日
- 読了時間: 13分
更新日:7月23日
「……見えてきた。あれが、竹生島」
彦根港から船出して、40分。デッキで風を受けながら、佳帆が前方を指差した。

「思ってたよりちっせぇな。400万年の歴史がある琵琶湖を留めてるアンカーだって言うから、モーン島(Ynys Môn)位でっけぇんだと想像してたぜ」
「モーン島?」
「ウェールズにある島。イングランドでは『アングルシー島』って呼ばれてる。ケルトの島だよ。遺跡がいっぱい残ってるんだ」
「へぇ。いつか行ってみたいなぁ。私、櫂さんからカムリ語のこと聞いて、すごく興味が出てきたの。日本語と同じように、少なくとも2000年以上の歴史がある言語だものね」
「あぁ。『指輪物語』を書いたJ・R・R・トールキンも、『中つ国』の灰色のエルフが話す言葉は、カムリ語を参考にして書いたって言われてるぜ」
「あ!『シンダリン』のこと?…そうかぁ、トールキンはオックスフォード大学出身の言語学者だものね。私も大好きなの。『ロード・オブ・ザ・リング』、懐かしいなぁ、映画館に見に行ったわ」
「オーランド・ブルームを見に?」
「ちゃうよ!」
櫂の茶化しに、佳帆は頬を染めて答えた。
「私、アラゴルン派やもん!ヴィゴ・モーテンセンさんが格好良くて…」
「やっぱりイケメンを見にいったんじゃねぇか」
笑いながら櫂は続ける。
「だが、お目が高いぜ、社長。彼の役者として体を張った演技は有名だ。撮影秘話知ってるか?」
「え?撮影秘話?」




